この地域の初節句に関する風習

注意)以下はあくまでこの地域でよく言われる風習です。「必ずこうしなければいけない!」ということではありません。
ただ現在でも、このようなことが行われている地区がたくさんあるという事で記述致しました。

1)贈り雛(高砂)
この地域では昔から、写真のような老夫婦のお人形を贈る風習が有ります。このお人形は高砂といい供白髪ともいいます。※里方(娘を嫁がせた嫁方)の両親から若夫婦へ、「このような翁媼になるまで添い遂げなさいよ。」「働き者になりなさいよ。」という思いを込めて贈る物です。
贈り雛というくらいですから、昔は娘が嫁いだ初めての雛祭り前に贈っておりましたが、現在では初節句ということで正月節句前に贈る方も多くなっております。

2)羽子板飾り
女の子の初正月節句に飾る物です。「魔をはね(羽根)のける。」と言う意味で、魔除けの意味があります。こちらも、※里方の両親が、「この子が健やかに育ちますように。」との思いを込め贈る物です。羽子板は正月飾りですので、基本的には12月初旬より小正月(1/15)頃まで飾ります。正月節句の場合はお返しは無しです。羽子板を頂いてもお返しをする必要は有りません。(注1)

3)破魔弓(弓破魔)飾り
男の子の初正月に飾る物です。その名の通り「魔を破る弓。」ということです。こちらも、里方の両親が、「この子が健やかに育ちますようにとの思いを込め贈る物です。飾る時、お返しなしなどは羽子板と同じです。(注1)

4)ひな祭り
雛人形も里方の両親が贈ります。仲人さんやご親戚は、市松人形や童人形、舞踊人形などを贈ります。贈るのにも順番があります。(11)大きさの順番をご参照下さい。)頂く側は一席もうけ、人寄せ(お披露目)をします。(注1)

5)端午の節句
五月人形、鯉のぼりも里方の両親が贈ります。仲人さんやご親戚は、武者人形や、神天鍾馗、鯉のぼりの単品などを贈ります。頂く側は一席もうけ、人寄せ(お披露目)をします。(注13)

6)祝い凧
五月五日に凧揚げをする風習があります。子供の日に向けて凧を作るなり、買うなりして、お祝いで差し上げると言う物です。相模の大凧などは、この風習から来ている物だと思います。

7)三月掛け
これは「三月に掛けてお祝いをするのは好ましくない。」と言う風習のことをいった物です。例えば、「正月飾りを11月から飾る。」とか、「雛人形なら1月、五月人形なら3月から飾る」ということです。
 この風習は、元々お産の里帰りから来ているようです。『お産とは言え、居心地の良い実家にあまりながいし過ぎると、戻るのがイヤになってしまうといけないので、適当な所で戻った方がいいですよ。また、嫁ぎ先へのイメージも悪くなりますよ。』といったことを、具体的に口にしなくても言いように出来た詞のようです。
 従って、本来あまりお節句とは関係ないとは思うのですが、この周辺の年配の方々はお節句でも三月掛けと言って嫌がる方がいますので、念のためここに付け加えおきました。
(注2)

8)両祝い
「羽子板と雛人形。」とか、「破魔弓と五月人形。」など両方のお祝いをすることをいいます。(注3)

9)片祝い
ひなまつりや五月のお節句だけをやって、正月節句をやらないことをいいます。(注3)

10)お祝いをする順番
この順番は、お宮参り、正月節句、三月もしくは五月節句です。従って、今年の1月に産まれた子は来年正月節句をやって、その後三月なり、五月なりの節句を行います。これは、お祝いなので1から始めたいというのが、理由のようです。(注4)

11)逆さ祝い(さかさ祝い)
10)の順番が違ってしまう事を言います。
(注4)

12)大きさの順番
里方の親元が一番大きな飾りを贈ります。次が仲人、その次がご親戚と言う順番です。(注5)

13)人寄せ
初節句のお祝い等で里方のご両親やお祝いをしてくれた親戚、仲人さん、ご近所のお客様などを呼んで、主役の子供さんと里方から頂いたお雛様などを披露する席のことです。(注6)

14)一夜飾り
正月飾りを12月31日に飾ることを言います。(正月のお飾りと一緒。)あまり良いことではないとされています。(注7)

15)なぜお節句の品は皆、里方で用意するのでしょう???
昔(から)の考え方ですと、嫁は婿に嫁ぐのではなく、家に嫁ぐものなのです。従って里方の親は、嫁いだ娘が肩身の狭い思いをしないように嫁入り道具を揃え、お節句の品、七五三、お入学など、ありとあらゆるものを揃えました。それは将来、自分の娘がその家を取り仕切る事を表していました。今もこのような考え方を持つ地域の方はたくさんいらっしゃると思います。(注8)


ご注意  こちらに記述した物は最初に述べましたとおり、この地域の全ての家庭で行われていることでは決してありません。「必ずこうしなければならない。」ということではないのです。私、個人の見解ですが一番大切なことは、「初節句の子供をお祝いしてあげようと言う気持ち」です。金額や、大きさではありません。但し、次に大切なことは「お節句は家と家との事である。」ということ、つまり「お互いの家を尊重しましょう」ということなのです。これらの事を考慮し次の注意点を加筆致します。

注1)逆にいいますと、家が広くて仲人さんやご親戚がいろいろとお祝いして下さる家に娘さんを嫁がせた場合は、やはり金額は別にしてもある程度の大きさの物を贈った方が無難でしょう。もし、先方さんで「うちの方で用意します。」といわれた場合はお言葉に甘えてしまった方がいいと思います。予定していたご予算で何か「気持ち」を買って贈ってあげたらいかがでしょうか。
また別所帯で、飾る場所もあまりないのに大きすぎる飾りはどうかとも思いますが、飾る場所というのは一時の事です。まずは、贈られる方の気持ちを大切にして下さい。例えば、ご主人のご実家で人寄せ等をするのでしたら、別所帯でもご実家の方に贈るという方法もございます。
また近年、『羽子板をお雛様と一緒に飾らなければいけない。』という方もいらっしゃいますが、本来はお正月飾りですので、そのようなことはありません。 だからと言って、飾ってはいけないという事でもありません。 色々飾れば、ひな祭りがにぎやかになりますし、それはそれで良いとおもいますが、それがプレッシャーになってもいけないので、あまり『こうしなければいけない。』と固く考えない方が宜しいと思います。
これは破魔弓に関しても同じです。

注2)これは、「この時期に絶対買ったり、贈ったりしてはいけない。」ということではありません。3つきにかかって飾るのがあまり好ましくないと思っている人が地域によってはたくさんいらっしゃるということです。但し、先方様が気にする場合、贈るのは翌月にしたほうが好いでしょう。

注3)高砂もそうですが、羽子板破魔弓の風習には贈る地域と贈らない地域があります。当然、贈らない地域ではこの様な言い方はしません。例えば里方のご実家で贈る風習がない場合、この地域に嫁がれたとしても、里方から正月飾りが届かない事が多々有ります。この様な場合は里方に催促は出来ませんので、ほとんどの場合ご自分の所で揃えられます。

注4)現在はこの順番にこだわる方もかなり少なくなっております。最近では、逆さ祝いなどの言い方もあまりしなくなっていますし、例えばご親戚などで仏事や病気の方などがあると、お祝いがどんどん先延ばしになり、時にはやりそびれてしまう事もありますのでお祝いは出来るときにするというのが理由となっております。

注5)大きさの順番が決まっているということは、「それぞれの家がお互いに、それぞれの家を尊重する。」ということです。例えば人寄せで呼ばれたときに、招かれたお客さんは飾られている品物を見て何処から贈られてきたか予想します。これは、暗黙の了解があって出来ることなのです。もし仲人さんやご親戚があまり大きな飾りを持っていきますと、親元の顔をつぶす事になりかねません。もしそうでなくても里方の負担がより大きくなってします。

注6)現在、家の事情で皆さんがこういった事を出来るとは限りません。これも気持ちですから、そんなに賑やかにやらないとしても、両家のご両親を呼んで一席設けたらいかがでしょう。お子さんを介して両家のお爺ちゃんお婆ちゃんが揃って食事をすることなどお節句でもなければなかなか出来ません。自宅で出来なければ外食でも構わないと思います。

注7)飾るのを忘れてもし31日になってしまったら、年が明けてから飾った方が良いでしょう。

注8)あまり硬く考えすぎることで、楽しいお節句が楽しくならないように注意してください。
 地域によっては五月のお節句は外飾りで嫁ぎ先で用意する所もありますし、その他でも最近では孫は両家にとっての孫だからと言う考えで、折半にするお宅も少なくありません。もし嫁ぎ先で、お節句の品などを買ってあげたい場合は、是非早めに里方にその意思と理由を伝えてください。それが一番もめないコツです。
 また先述したとおり、本来お節句の品は里方で送るものです。
買ってあげたいからと里方に何も言わずに、嫁ぎ先で用意してしまうと『うち(里方)で用意するつもりだったのに勝手に買っちゃった。』と思われることもありますのでご注意ください。
 ただし、あまり待っても送られて来ない場合は、里方のお宅にお節句に関する頓着が無い場合もあります。そのときは、決して里方で買う物だからなどと催促はせず、お祝いしてあげたい方々で用意してあげてください。これは風習ではなく、私からのお願いです。

お節句は、お祭りです。お祭りですから、面倒でもあり楽しくもあるものです。面倒なことを面倒がると、楽しくなくなることもあります。
両家で行うお祭りですから、解らない事は聞き、話し合うことはきちんと話合ってください。それでも解らない時、お節句のことでしたら近所のお人形やさんに行って聞いてみてください。良心的なお店でしたら、商売抜きでいろいろ教えてくれると思います。最後にこのような事を書くのは恐縮ですが、この様なページを見て色々と考えるより、その方がお勧めです。

以上。ご考察ありがとうございました。

寿鳳人形の東芸 代表取締役 原田 貴泰

※上記の内容で、「それは間違っている。」とか「うちの地域ではこんな事をする。」などございましたら、是非メールにてご一報下さい。





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